舟状骨骨折
人間の体は骨が
赤ちゃん:305個
成人:206個
あります。
成長の過程で骨がひっついたりして、
最終的には206個に落ち着きます。
で、基本的にはすべての骨が骨折する可能性を持っています。
今回の話のテーマは「舟状骨」という
一般の方はあまり聞かない骨だと思います。
舟状骨は手の骨であり、
手根骨といわれる8個の骨の1つです。
手首を構成する骨ですが、
8個もあるので手首は細かい動きが可能になっています。
画像で丸がついた部分が舟状骨になります。
こうみると、大きさも大したことなさそうな骨ですが、
かなり重要な役割を担います。
ということで、
今回は小さい骨だけど、
重要な舟状骨の骨折について解説します。
ポイントは
- 舟状骨骨折は後遺症になる
- 骨折でズレが生じているケースは手術が安全
- 圧痛と可動域制限が重要
- 見逃しやすいために評価できる医療機関を勧めます
機能
手関節掌屈(手の屈曲)は橈骨手根関節で40%,
手根中央関節で 60%の運動があります。
8個の手根骨の指先側(遠位)にある4つは固定力が強く、
あまり動きませんが、
手関節側(近位)の4つの骨、
特に三角骨、月状骨、舟状骨の3つは可動性が高いです。
ですので、
舟状骨が何かしらの原因で機能不全が起こると、
手関節の動きに大きく影響することがわかります。
骨折が見逃されて、
骨がしっかりと治らないと、
可動域制限というのが起こり、
手首に制限が出現します。
DISI変形、VISI変形とかいう呼称がついていますが、
グラグラして周りの組織が破綻して機能が低下するということです。
舟状骨骨折
圧倒的に多いのが手をついた転倒です。
中学生、高校生に多く、小学生では稀です。
また、高齢者においても稀になります。
高齢者の場合は舟状骨が折れる前に、
橈骨という骨が先に折れるため舟状骨骨折に至りません。
![](https://kenshin.link/wp-content/uploads/2021/08/smith-fracture-4-scaled.jpg)
ボールが手に当たっても骨折することも多く、
GKなどが骨折することも頻繁に遭遇します。
で、手関節周囲に痛みを訴えて医療機関を受診するわけですが、
見逃されやすいのが特徴です。
なぜなら、ガッツリと骨折すれば初診時でも骨折線が見えますが、
舟状骨は分厚いためにヒビ程度であれば、
レントゲンでは骨折線として描出されません。
ただ、本疾患は発見しにくいことは医療関係者も理解しているはずですので、
慎重な先生であれば念の為に固定しておいて、
骨折想定で対処されると思います。
もし、
手関節に痛みが強く、
レントゲンで明らかな異常は認めず、
舟状骨に圧痛があれば、
念の為に固定をする!
というのが勝利の方程式と考えます。
検査機器が揃っている施設でMRI検査が可能であれば、
MRIにて舟状骨で出血が起こっているのかを確認することが可能です。
そこで、舟状骨に炎症が無いのであれば、
舟状骨は原因でないため安心できます。
画像のように骨の内部で炎症が確認できます。
なお、レントゲンでも骨折が明確に確認できるパターンがこちら。
舟状骨に線状の模様が入っています。
こんな感じです。
大切なことは
早期診断ならMRI
レントゲンなら経過で確認
もっと医療的な判断になると、
骨折と骨挫傷
骨折線の入る場所
固定期間と固定肢位・・・
などなど、話題が尽きない舟状骨骨折ですが、
まずは基本的な部分として
- こういう病態があること
- 見逃されやすいということ
- 甘く見ると手術になること
を知っておくと良いと思います。
コメント